椅子のデザインは実に様々です。その中で私が一番好きなのは、このワシリーチェアです。

この椅子は、マルセル・ブロイヤーがバウハウスに居た頃(1925年)にデザインしたアームチェアです。ワシリーは、ロシア出身の抽象画家カンディンスキーのファーストネームで、この椅子はカンディンスキーのためにデザインされました。カンディンスキーは、当時バウハウスで教授をしていたので、バウハウスでのブロイヤーの同僚にあたります。
自転車のフレームからヒントを得たというスチールパイプの構造は、基本的には縦横のグリッドで組まれています。一見してモダンだと感じるのはそのためです。ただし角はパイプを曲げるのに適した曲率になっています。すべてを直線で構成するというコンセプトを優先させれば、角も鋭角にデザインしてしまいがちですが、ここはむしろパイプという素材の特性を優先させています。
座面、背もたれ、肘掛には、タンニンなめしの皮革が使われています。これらも見た目には直線的ですが、体重をかけたときには適度にしなり、人間の体をソフトに受け止めるようになっています。
このように、見た目には直線基調でクールなのですが、実際に座る人間のことも考えてデザインされているのがわかります。コンセプトと材料の特性、それに人間の体感とが、奇跡的に調和していると言えます。
ワシリーチェアは、現在でも15万円程度で手に入れることができます。この椅子がどのようなインテリアに合うのか考えるのも面白いと思います。
