
周囲に余裕をもって建てられるような広い敷地があれば理想ですが、現実にはなかなかそうはいきません。特に市街地では、隣家との間にほとんど隙間がないような建て方をせざるを得ません。
無駄のないプランニングというのは褒め言葉ですが、でもまったく無駄がないものは息が詰まります。一見無駄に見えるものが、実は豊かさにつながっているのではないでしょうか。1部屋でも多く取れるように無理にプランニングするよりも、空間を使わない状態のままにしておく方が、住む人にとって意義があるのではないかと思います。
住宅同士が隙間なく並ぶような配置の場合、隙間をどこかで確保しないと風も光も通らず閉鎖的になります。そこで、住宅同士の間に隙間がないのなら、それぞれの住宅で隙間を確保しようというのがこのプロトタイプのコンセプトです。
象徴的に言えば、隙間とは、光と影のうちの影に相当します。影がなければ光も生きてこないように、影とは無意味なようでいて不可欠なものと言えるでしょう。人の住む部分の面積を多く確保しようとする効率優先のプランニングは、影を排除して光の部分だけで住宅を構成しようとするものです。住宅の設計から影が排除されてきた結果が、最近の住宅地の単調な街並みであるような気がしてなりません。
これからの住環境を考えるとき、必要なのは影を受け容れることだと思います。影とは何かをひとことで言い表すことはできませんが、あえて言えば「別の可能性」です。常識的な解決を超えるような可能性が、住宅の設計にはまだまだ眠っているはずです。

