天王寺動物園

大阪の天王寺動物園周辺は、建築的にというか都市的にというか、非常に興味をそそられる場所です。
第一に、都市の中心部に動物園があるということです。これは東京の上野動物園とも共通します。敷地の広さや地形の面白さからいえば、郊外立地の方が適しているでしょうし、実際最近の動物園は郊外につくられることが多いようです。天王寺や上野といった歴史のある動物園が、中心部の交通の便利なところにつくられたのは、ひとつの時代の意志といっても良いでしょう。
第二に、動物園が美術館と隣接しています。これも上野と共通です。動物園は娯楽というジャンルでしょうが、広い意味では文化といってよいかもしれません。文化が都市の中心に来るということです。
第三に、繁華街が隣接するという特徴があります。これが都市計画の結果といえるのかどうかはわかりませんが、天王寺動物園には「新世界」という繁華街が隣接します。同様に上野動物園には上野の繁華街が隣接します。
訪れた都市のすべてで動物園を見に行っているわけではないので、他の都市はよくわかりません。ただ東京と大阪で共通点が見られるということは、これらの点が都市の条件といえるのではないかと私は考えています。都市の指標としては、行政機関の集積度や人口、商業施設の質と量も挙げられますが、しかし都市が都市らしく見える条件を挙げるとすれば、それは動物園の存在ではないかと思います。

都市は、いろいろなものが入り混じっています。それを政治・経済・文化・生活などに分けて考えることは可能ですし、それはゾーニングという形で都市計画に反映されていきます。しかしゾーニングという手法でつくられた現代の都市が、いきいきとしたイメージを表出しているかといえば、必ずしもそうではありません。むしろ天王寺動物園周辺に、より都市的なイメージを感じてしまうのはなぜでしょうか。もちろんこれも都市計画には違いありませんが、しかし現在の都市計画とは少し違っています。
都市を動かす要因としての欲望をそのまま都市の中心部に閉じ込めるという発想が、以前はあったのはないかと思います。それが都市の濃密さを形成しているのではないでしょうか。現在では欲望は郊外へと発散させられ、密度が希薄化しています。都市の豊かさは、人口の大きさでも、単なる物量的な豊かさでもなく、それがどちらに向かうかにかかっているような気がします。

